2008年 02月 23日
#
by noda-methode
| 2008-02-23 20:38
| link
カテゴリ
検索
リンク集
以前の記事
ライフログ
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2005年 12月 01日
ストリング誌への投稿のコピーです。
期限限定公開です。 ***************************************************** フレンチ式のコントラバス奏法から体に優しい楽器の弾き方を探る −弦楽器の鳴らし方、斜め弾き、フレンチスタイル、健康奏法… コントラバス奏者 野田一郎 コントラバスの弓には、ジャーマン式とフレンチ式があります。ジャーマン式ではガンバと同じように弓を下から持って演奏します。ドイツをはじめポーランド、チェコ、日本などではジャーマン式が主流です。一方、フレンチ式の弓はチェロとほぼ同じ持ち方です。その名のとおりフランスはもちろん、イギリス、イタリア、オランダなどで普及しています。米国やロシアでは両方が使われていますが、たいていの国ではどちらか一方の弓が使われます。 私自身は、1970年にコントラバスの最初の手ほどきを受けて以来、コンクールに入賞したり、フランクフルト・オペラに首席コントラバス奏者として入団するなど、長年にわたって全てジャーマン式で演奏してきました。けれども、十年前にフレンチ式に転向し、それ以来、フレンチ式の奏法の修得と並行して、弦楽器の響かせ方や健康的な奏法についていろいろと考えてきました。 そこで、「なぜフレンチ式に?」という疑問に答えるとともに、弦楽器の演奏についての私の考え方を述べたいと思います。 まず、弦楽器がどのように音を出すのかイメージしてみて下さい。このとき、多くの人は弦が振動しているところを思い浮かべると思います。 弦の振動というと、学校の理科の実験で使った「モノコード」のことを思い出した人もいるかもしれません。モノコードは、台の上に2本の棒が立っていて、その間に1本の弦を張ったものです。この弦を振動させて振幅、振動数などが説明されます。ただ、気付いていただきたいのは、モノコードはほとんど音を出さないということです。弦がいくら大きく振動しても回りの空気を切るだけで音は生じません。 それでは、弦楽器はどうして音を出すことができるのでしょうか。モノコードの場合は弦だけが振動しますが、弦楽器の場合は、弦の振動が駒から表板、魂柱、裏板へと伝わります。また、実際には、サドル、弦の使っていない部分、スクロール、テールピースなども全てが振動します。そして、それらの全てが空気を振動させます。 また、弦の振動のことをイメージしたときに忘れられがちなのは、弦の長さ方向の振動、つまり、弦の伸び縮みの振動のことです(ここでは「縦振動」としておきます)。「弦を幅広く振動させれば楽器もよく鳴るだろう」と考える人が多いのですが、弦だけがいくら振動してもそれが音に反映されるわけではありません。むしろ、弦ばかりがむやみに振動すると発音の効率は悪くなってしまいます。そこで、私の奏法では、弦を振動させることよりも、弦の振動を楽器に効率良く伝えること、楽器のあらゆる部分の振動をじゃましないことを心掛けます。そして、このような奏法のためには、弦の「縦振動」のことを忘れないようにすることが大切です。 さて、私の奏法の具体的なポイントは次のようなものです。 ●まず、全体的な注意として 1 全身のあらゆる部分を常に脱カする。 掌や背中はもちろん、脚、腰、首、顔など、あらゆる部分の筋肉と関節を緩め、弾力性を失わないように注意します。後で詳しく説明しますが、コントラバスでも、チェロのように座って演奏すると、自然に下げた腕や指の方向がすべて重力の方向と一致するような合理的なフォームができあがります。 2 「摺足」を心掛ける。 左手については、指先が弦に触れた状態を基本形にして、シフティングの際の指先の移動距離が最短になるようにします。右手についても同様で、弓毛が弦に触れた状態を保つように心がけ、むやみに弓を跳ねさせないようにします。 3 負荷を全体に平均してかける。 左手のシフティングにしても、右腕のボウイングにしても、手先や特定の関節にだけ負担がかかるような動きにならないように、指先から身体まで関係のある筋肉や関節が均等に負担を分け合うように気を付けます。特に左手は、手先だけで何かをしようとすると、楽器を局部的に締めつけることになり音質が歪みます。 4 楽器の裏板を中心として、楽器全体をすみずみまで鳴らす。 最初は弦を、次は駒だけ、その次は表板だけ、というようにそれぞれの部品の「鳴り」を意識しなから練習し、最後にその全てを利用して楽器全体を鳴らせるようにします。 5 楽器の裏板の振動も演奏者がコントロールする。 上で述べたような練習をして裏板が十分に鳴らせるようになったら、裏板の振動をコントロールして得られる効果も演奏表現に採り入れられます。つまり、弦楽器の表板は少しずれた位置で駒と魂柱に挟まれていますが、同様に裏板を魂柱と「何か」で挟むことにより、楽器からの音の飛び方を変えることができるのです。ここでいう「何か」は、ヴァイオリンなら肩、コントラバスならひざ等が利用できます。 6 音程が変わらないヴィブラートをかける。 「縦振動」を意識しながらヴィブラートをかけるための動きの幅を小さくすると、倍音の分布だけが変化して、音程の変化しないヴィブラートをかけることができます。端的に言えば、コントラバスでも、ヴァイオリンと同じ程度の動きで充分なヴィブラートをかけることができます。このヴィブラートは音の向かう方向、つまり聴衆に向けての音圧を周期的に変化させているのです。 ●次は右手(右腕)についてです 7 弓自体を傾けて弾く。 弓毛を全幅にわたってべったりと弦に着けるのではなく、やや傾けることによって弦の長さ方向、つまり駒の方向に蹴りを入れている感じで弾きます。これによって、すでに述べた「縦振動」を素早く発生させられます。 8 なるべく駒の近くを弾く。 弦の振動が楽器本体によく伝わるので、僅かな弓で十分な音を出すことができます。一般的には駒のそばで弾くと、音質が硬くなると考えられていますが、全身を十分に脱力して余分な圧力をかけないようにすれば、むしろ遠くで聴いたときによく響く柔らかな音がします。 9 弓を弦に対して斜めに当てて弾き始め、徐々に直角に近くしていく。 ダウンのときは、ヴァイオリンやヴィオラでは右手の甲を顔に少し近づけて弾き始めます。チェロやコントラバスでは、弓先が下に少し垂れ下がるようにして弾き始めます。アップのときは、小指側を少し手前に引っ張りながら弾いて、ダウンのときとは逆の動きになるようにします。 このような弓使いは、ピンカス・ズッカーマン氏による「サウンディング・ポイント」のレッスンを受けたことで啓発されました。このレッスンは、弦と弓毛とが作る平面上で、弓毛と弦との接点を中心として弓を15度ほど回転させながら、ほんの僅かに弓を引いたり押したりして発音させる練習でした。このような練習で、指の柔軟な動きが身に付き、楽器の芯をとらえて、小さな力で瞬時に有効な楽音を鳴らすことができるようになりました。 なお、弓を弦に対して単純に直角にしたまま弾くと、楽器の鳴り出しが遅くなる上に、弦の振動ばかりが大きくなって音の輪郭がぼやけ、結局はよく通る音が出ません。 ●そして左手についてです 10 弦を押さえつけない。 弦を指板に強く押しつけないように注意することが大切です。大きな圧力で弦を押さえると、ネックの自然な振動をじゃますることになり音質が浅くなってしまいます。また、シフティングにもじゃまになります。 具体的には、まず、指を立てないようにします。指先を立てて押さえると手のひらと指が緊張してしまいます。また、指先の腹の柔らかいところを弦に当てて押さえます。さらに、指の腹にびりびりと弦の振動が感じられる程度に緩やかに押さえることです。柔らかく押さえると音程が下がってしまうと心配になるかもしれませんが、左手の指と弓とで弦を伸ばすようにしてやると、自分の好きな音程を作れます。 11 掌もやや斜めにする。 指を素早く拡げたり閉じたりするのは難しい動きです。手のひらを僅かに駒の方に向けると、指が指板に対して斜めになって楽に開くようになります。また、音程のコントロールも楽になります。 12 指で指板を叩かない。 指板を叩くと、一見音の輸郭がはっきりしそうに思えます。しかし、実際には雑音が楽音の流れをじゃまするだけです。また、叩くためのムダな動きが、かえって発音を遅らせますし、勢いをつけて叩く動作のために左手と左腕が硬くなってしまいます。 13 できるだけ多くの指を使って弦を押さえる。 たとえば4の指でDを弾く場合、その下の音CやHも他の指で押さえます。さらに、使っている指全部に平均に重みをかけることが大切です。目的の音を押さえている指だけに力をかけると、結局、1本の指で押さえているのと同じことになってしまい、下腕の筋肉(三里のツボの辺り)が硬くなってしまいます。 これまで述べた私の奏法では、演奏者の位置では音量が低く雑音が多いように聞こえます。けれども、ホールのように広いところでは、楽器から離れるほど透明で豊かな音になり、ホール全体が一体に鳴るかのような響きを体験することができます。 では、私の奏法は、コントラバスではどのように実践されているのでしょうか。私の場合は、いろいろ試した結果、このような組み合わせになりました。 ㈵ 座って演奏する(座奏) ㈼ フレンチ式の弓で弾く ㈽ ガット弦を使用する ㈿ 固い松脂を使う 以下、それぞれのポイントについて詳しく説明します。 ㈵ 座奏について コントラバスは、特にソロでは立って演奏されることが多いものです。ところが、立奏では、楽器を支えること、楽器の回転を押さえること、ロウ・ポジションとハイ・ポジションでフォームを変えなければならないこと、などのために、本来の演奏以外のことに大きな負担がかかります。 そこで、私は、高さが15センチメートル程の平台の上に、ピアノ用の背もたれの無い四角い椅子をのせ、その椅子に座ってチェロのように楽器を正面に構えて演奏しています。足は両方とも平台の上にのせ、楽器のエンドピンは平台の前につないだ板にのせます。このような演奏フォームには、左記のような利点があります。 a 演奏作業の中心が、体のほぼ正面になっていて、コントロールが楽になります。 b 体も楽器も自然に安定しているので、全身を脱力して演奏に集中できます。 c ハイ・ポジション、特にA線のハイ・ポジションまで楽に使えるのでフィンガリングの自由度が飛躍的に増します。 d 腕を自然に下げると、フレンチ式で演奏する場合の右手(右腕)の好ましいフォームが自然に形づくられます。 e 自然にできる弓の傾きが、弓から弦にかける重みの方向と自然に一致します。 f 脚を使って楽器の裏板の振動をコントロールできます。 ただし、目下のところ、いくつかの課題も残されています。 x ロウ・ポジションのときに上半身が振れて弾きにくい場合があります。 y G線を遠く感じます。 z 椅子や平台の用意や運搬が面倒です。 もっとも、x、yは憤れでかなり解決できると思いますし、zの運搬の苦労は、コントラバス弾きならばどのみち日常的なことです。いずれも利点に比べれば些細なことだと思います。 ㈼ フレンチ式の弓について 私の気付いているフレンチ式の弓の利点を述べます。 a 腕の有効長が6センチメートル程伸びます。したがって、体を傾けたり曲げたりすることなく、自然に駒の近くを弾くことができます。ジャーマン式の奏者の多くは右肩を落とすようにして演奏しますが、体のバランスを崩したまま演奏を続けることは、内臓の健康にもよくないと思います。これは、体格の点で不利な日本人には特に深刻な問題だと思います。 b 弦に対する弓の上下動(弦についたり離れたり)が減り、弓毛が弦に接した状態を維持したまま演奏することができるようになります。 c 腕、手、指の全ての関節と筋肉を弾力的に用いることができるので、弓自体の振動が妨げられません。また、腕の重みを自然に弓にかけることができます。さらに、どの弦を弾くときでも肩から腕にかけてのフォームが一定で、手首の「あおり」と肘から先の上下だけで移弦ができます。この点、ジャーマン式では移弦の際に重い腕全体を肩から動かす必要があります。 d 右記のこととも関連しますが、駒の近くを楽に弾くことができます。その結果、弓の速度を十分に落とすことができ、一弓で弾ける範囲が広がるので、息の長いフレージングが可能になります。 e スピッカート、リコシェ、マルテレなど、ヴァイオリンでは当然に用いられている運弓テクニックを、コントラバスにも応用することが容易になります。 f フランス製の優秀な弓が使えます。というのは、サルトリー、ウシャール、ヴォワラン等、フランスの弓作りには、イタリアの楽器製作に匹敵する高い文化があるからです。 ㈽ ガット弦について 弦の材質も演奏に大きく影響します。具体的には、ナチュラル・ガットが最も好ましく、人工ガット(ナイロン・ガット)がそれに次ぐと考えています。 ガット弦は、振動(縦の振動を含む)の始まりが早く、弾き終わると振動が素早く減衰します。そのために音の切れがよく、前の音と次の音とが混じりません。この点、スチール弦は全てについてタイムラグを感じます。 私はP社のEという銀平帯巻きのガット弦を使用していますが、音色、特性、品質、耐久性の全てについて十分に満足しています。また、この弦は、巻銀の摩擦係数の高さと弦の太さ(スチール弦に比べて太い)により、指に自然な摩擦があります。このため、弦を押さえつけたままではシフティングができませんし、楽器も鳴りにくくなります。その結果、自然に左手を脱力して弾くようになります。音楽家であれば、その音を聴けばガット弦の良さをすぐに理解できると信じます。 ㈿ 固い松脂について 弓で弦を弾き始めると、弦はまず弓毛と共に移動し、やがて弦の張力が弓毛の摩擦力に打ち勝つと弓毛から解放されて戻ります。この瞬問に音が初めて鳴りだします。弓を動かし続けると弦は周期的に解放されて振動します。固い松脂を使用すると、この弦の解放の周期が縮まり、よりきめ細かく柔らかい澄んだ音色をつくることができます。 太くて重い弦を使用するコントラバスでは、一般に、油脂の含有量が高く、粘性のある松脂が使用されています。このため、弓毛と弦の間には、いつも柔らかい松脂の層があります。この状態で弓を動かすと、松脂の粘度が高いので、最初に弦が解放されるまでに時間がかかります。また、弦が毛から離れるタイミングは、演奏者の意識とは無関係に、松脂の特性で決まってしまいます。その結果、弦の振動のコントロールが困難になり、いつも荒い音が遅れて発生することになります。その上、弦の解放が遅いので弦の振幅が大きくなり、音の終わりをていねいにおさめることも難しくなります。弦に振動が残ると、次の音の音程と混じって音色が濁ります。 なお、私は、W.S.(ニューヨーク)というヴァイオリン用の松脂を、それもライトと称する非常にきめの細かい堅い松脂を使用しています。 「弦の縦振動(長さ方向の振動)」を意識し、音場感(空間意識)を維持し、そして身体全体を脱力して弾力的に用いるという奏法にこの松脂が加わったのが、今のところ到達している私の奏法です。 以上のような私の奏法は、従来から一般的に言われているセオリーとは違っています。けれども、類似した奏法を提唱している音楽家もすでにいます。私は、ドイツのコブレンツに工房を構える弦楽器マイスターの木村玄氏から受けたアドヴァイスから、このようなインスピレーションを得ました。 また、技術的な面では、奏法の習熟によって、どんな曲でも弾けるようになりますが、大切なことはその先、すなわち、音楽そのものの表現であることはもちろんです。 最後に発表の機会を与えてくれたストリング誌と、私の奏法を理解し、どうやってそれを表現したら良いかという手助けをしてくれた三好温氏へ謝意を表して筆を置きます。 野田一郎プロフィール 東京芸大で故今村清一、故江口朝彦の両教授に師事し卒業。78年ベルリン国立音大留学、ベルリン・フィル首席コントラバス奏者ライナー・ツェペリッツ教授に師事。80年フランクフルト市立歌劇場管第1首席コントラバス奏者となり現在に至る。89年石橋メモリアルホールで第1回リサイタル。最近では98年ストラディヴァリウス・サミット・コンサートでベルリン・フィル・メンバーと、また堀江真理子六重奏団、マインツ・バッハ合唱団オケのメンバーとして演奏等々、幅広い活動を行っている。 #
by noda-methode
| 2005-12-01 21:31
| ストリング誌2000年3月号
2005年 11月 15日
2005年11月17日(木) 改稿
コントラバスは特にその大きさのために繊細な表現には向かないとされている。 そのコントラバスより音楽的な表現を可能にすることを模索し、 従来の奏法にいくつかの不合理な点を見出した。 これを改善し、『野田メトーデ』を確立、この大きな楽器を楽に、 素早く、滑らかに演奏できるようになり、以前に比べると音楽そのものに神経を集中できるようになった。 更に、合理的な奏法によって、演奏者が健康を損ねることも避けられると考えている。 ここに述べるのはコントラバス奏法に関することだが、 弦楽器の音響メカニスムは他の弦楽器にも共通しているだろう。 ヘルムホルツ波を意識し、音場感(空間意識)を実感すること、脱力など意識面と、 フレンチ弓、ガット弦、座奏、松脂という4つのハード面について述べていきたい。 『野田メトーデ』は従来からの一般的セオリーとは異質だが、類似した奏法を提唱している音楽家もすでにいる。 チェロのゲルハルト・マンテル教授、ヴィクター・セイザー氏、コントラバスのクヌート・ギュトラー氏などだ。 私は、ドイツのコブレンツに工房を構える弦楽器マイスターの木村玄氏の助言と示唆からこのメトーデを考え出した。 技術的な面では上記のような奏法の習熟により演奏者としての能力は高まるが、 大切なことはその先、すなわち、音楽そのものの表現であることは論を待たない。 そのための音楽理論、音楽史、和声楽などを初めとして、一般教養、生活哲学なども音楽に重要な要素である。 広島在住の奥田治義氏は私の奏法を理解し実践されている。 よりわかりやすく解説されているのでぜひ読んでいただきたい。 奥田氏の論文は三好 俊典氏のHP音楽そしてコントラバスに公開されている。 #
by noda-methode
| 2005-11-15 18:36
| 野田メトーデHP版
2005年 11月 15日
2005年11月17日(木)、(改稿未完)
文章作成に当たっては三好温氏に全面的に協力をしていただきました。 弦楽器全般の鳴らし方から始めてコントラバス特有の問題点に言及しています。ここにお礼を申し上げます。 音について 弦楽器のメカニズム ヘルムホルツ波 健康と演奏 弦の「弦長方向振動」 サウンディング・ポイント 駒の近くを弾く 弓を傾ける、 サウンディング・ポイントの回転運動 左手で弦を押さえつけない 「摺り足」 指板を叩かない 腕全体 音の通り 座奏について 平台 楽器の構え方 フレンチ式の弓 弦について 松脂について 練習方法 コントラバスは特にその大きさのために繊細な表現には向かないとされている。 そのコントラバスより音楽的な表現を可能にすることを模索し、 従来の奏法にいくつかの不合理な点を見出した。 そしてこれを改善した結果、弾きにくいと言われるこの楽器を楽に、 素早く、そしておおらかに演奏できるようになった。 また、何よりも、以前に比べると音楽そのものに神経を集中できる度合いが飛躍的に高くなった。 更に、合理的な奏法を採用することにより、演奏者が健康を損ねることも避けられると考えている。 なお、次ページ以降に述べるのはコントラバス奏者である私自身の奏法に関することだが、 基本的な考え方は他の弦楽器にも共通していると考える。 高度な演奏技術は、音量、音色のみならず緊張感、速度感、距離感、音場感(空間意識)等々の 多くの要素を駆使して豊かな音楽表現を可能にする。 ここで、音量はあくまでも相対的なものである。聴衆は、 小さくても内容のある音には耳をそばたてるが、 大きな音でもそれが単調に連続するとかえってさえぎろうとさえする。 従って、絶対的な音量は小さくとも大きなホールの隅々まで音楽を伝えることは十分に可能である。 さらに言えば、聴衆の一人ひとりの心に直接語りかけるような音を目指すべきである。 また、演奏者自身の身体や健康を害するような不自然な奏法は、 結局は聴衆にとっても不自然に響くし、視覚的にも不快感を与える。 コントラバスの演奏は主にその大きさのために無理が生じやすい。 若くして体調を崩したり死亡したコントラバス奏者が私の周囲にも何人かいるが、 直接の原因が演奏にあるわけではないにせよ、 健康を害した要因のひとつに不自然な奏法があったと確信している。 まず、弦楽器が楽音を発生するメカニズムを演奏者の立場から考察する。 弦の振動というと、学校の理科の授業で取り上げられる「モノコード」を用いた実験が想起される。 台上に固定された2点間に張られた1本の弦の振動を観察して、 「振幅」、「振動数」等の概念を理解する実験である。 しかしながら、このような装置が弦楽器の原型であるかのような理解は間違いである。 両端を固定されて振動する弦は空気を切るばかりで、 その振動を空気に伝えることはほとんどできないからである。 「弦楽器」では、振動する弦の一端を支える駒も振動しており、 さらに、その振動は楽器本体で増幅されて周囲の空気を振動させる。 さらには緒止め、ナット(上駒)指板、ネック、渦巻き(スクロール)なども振動している。 つまり、モノコードから得られるイメージは、 純粋な弦の振動を理解するのには良いかもしれないが、 楽器の発音、殊に楽音の発生を考える場合には適切なモデルではない。 では、楽器の発音はどのようにイメージされるべきだろうか。 楽器は主に振動源と増幅部から構成されている。弦楽器の場合弦が振動源で、 指ではじいたり弓でこすることで弦を運動させる。 この運動エネルギーを楽器本体に移動させて増幅するとホールに響き渡る音が発生する。 楽器本体が良く振動しているとき、弦の振幅はかえって小さくなる。 つまり音量と弦の振幅は必ずしも比例しない。 弦のどういう振動が駒に伝わりやすいかというと、弦の長さ方向の振動である。 つまり伸び縮みの方向と考えて欲しい。 これを発見したのはドイツの音響物理学者のヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(1821-1894)。 このヘルムホルツ波は安藤由典教授が音楽之友社刊、新版「楽器の音響学」の中で、 近藤正夫、久保田秀美両氏による追試の写真入りで紹介している。 実際の演奏では、弦長方向振動を意識することである。 振動により生じる弦の振る舞いは前記したモノコードの弦のように単純なものではない。 弦の運動の大半は駒に伝えられるが、弦自体の振動には弦の長さ方向の成分が含まれる。 従って、弦長方向振動をイメージしながら弾くことで、より効率よく楽器を発音させることができる。 このようなイメージは、ピンカス・ズッカーマン氏による、 サウンディング・ポイントを重視したレッスンを受けて後に気づいた。 これは、弦と弓(厳密には弓毛)のなす平面上で、 弓毛と弦の接点を中心として弓を15度ほど回転させながら、 僅かに弓を引きあるいは押して発音させる練習である。 このような弓の回転は指の操作だけで実現することができ、 楽器の芯をとらえて小さな力で瞬時に有効な楽音を鳴らすことができる。 この練習により指の柔軟さと精緻なコントロ−ルが得られる。 #また、弦の振動が効率よく駒に伝えられると、弦自体の振幅はむしろ小さくなる。 すなわち、振幅の大きさと楽器の鳴り方は比例しない。 「楽器を鳴らすこと」は、「弦を振動させること」ではなく、 あくまでも「楽器本体を鳴らすこと」である。 なお、「楽器が鳴っている」という状態は、 裏板まで十分に振動して楽器全体の隅々までが響いている状態をいう。 後述するように裏板の振動には抑制も必要だが、まず最初は響かせることをイメージする。 このようなイメージが具体化されると楽器の調整にも影響を及ぼす。 すなわち、無駄な振幅が減るので弦高を低く調整しても弦が指板を叩くことはなく、 その一方で十分に強い音が出せる。 また、弦高が低ければ左手指の負担が減って全身の脱力に寄与する。 さらに演奏会場での演奏について言及すると、なるべく遠くで聞こえている音を意識して、 客席の後ろの方にまで音を飛ばすこと、 すなわち「遠くを聴き、遠くに弾く」ことを心がけるべきである。 具体的な奏法については下記のような点に注意を払う。 1) 駒の近くを弾く; 弓毛の触れる位置が駒から離れるほど必要な弓の運動量が大きくなる。 また、弾く位置が駒から離れると、 弓の運動が始まってから弦の定常的な弦長方向振動が生じるまでの時間が長くなり、 運動と発音のタイムラグが大きくなる。 一般的な理解では駒そばで弾くと音質が固くなるが、 身体全体を脱力してあらゆる部分の弾力性を保つことを心がければ, 必ずしも「固い音」にはならない。 2) 弓を傾ける; 弓毛を全幅にわたってべったりと使うのではなく、 傾けることによって弦の長さ方向にいわば「蹴り」をいれる。 ここでも「弦長方向振動」をイメージすることが必要である。 3) サウンディング・ポイントの回転運動を活用する; 発音の当初は弓を斜めにして弾き始め、徐々に弦に直角になるように動かす。 このような運動により弦長方向振動が迅速に発生される。弓を単純に直角に弾くと、 弦の振動ばかりが大きくなるだけで「楽器の鳴り」には寄与しない。 4) 左手で弦を押さえつけない; 弦の側方から指を差し伸べるようにして、寝た指の腹の柔らかいところで弦を押さえる。 そして、長さ方向の振動を制御して音程を作ることを意識する。 指を立てると掌と指が緊張して動きがぎこちなくなる。 また、弦を押さえつけると、弦のみならずネック、スクロールなどの、 自然な振動を抑圧してしまうことになる。 ヘルムホルツ波は有効弦長の両端がある程度緩いほうが発生しやすい。 5)「摺り足」を心がける; 左手の指が弦の上に載った状態を基本型とし、 移動に際しても基本型からの変移をできるだけ少なくする。 こうして、いわば「摺り足」を心がけることにより、 シフティングの指の移動を最短距離にする。 また、左手指で指板を叩くことも避けるべきである。 指板を叩くと一見音の輪郭がはっきりするように思われるが、 実際には雑音が生じるだけで楽音の立ち上がりが鋭くなるわけではない。 また、体の動きと音楽の流れが一致しないので音楽的な流れが滞る。 さらに、左の上腕と手に不要な負担がかかる。 右手による弓の運動についても同様で、 弓毛が弦と接触した状態を基本型とし、むやみに弓を跳ねさせない。 6) 右手、左手共に腕全体を使う; 左手のシフティング、右腕のボウイング共、腕からの運動で弾く。 手先だけで何かをしようとすると楽器を局部的に締めつけることになり、 楽器に不整な振動が生じる。 また、弦を押さえるときにもできるだけ多くの指を使うことを心がける。 コントラバスについて具体的な例をあげると、 G線上で5度上のDを弾くときに第4指でDをとるとすると、 第1指はC、第2指はCisの位置を押さえ、第3指は第2指に添える。 そして、重要なのは、全ての指に均等に力を配分することである。 第4指だけに力をかけると、結局は腕の一部の筋肉が緊張することになる。 実際には、第3指と第4指を併せて用いることもできるが、 せめて、第2、第3、第4のように3本の指を使うことが好ましい。 7) 裏板テコ; 弦楽器の表板は駒と魂柱がオフセットで挟み込んでテコの動きをすることで、 弦からの振動エネルギーを増幅している。 この弦からの振動をさらに魂柱を伝って裏板にも伝えているのだが、裏板にはそのテコの相手が無い。 そこで裏板の一部を押さえ込むことで裏板にも増幅機能を効率良く持たせるのが、 私が命名した「裏板テコ」である。 あるヴァイオリンの巨匠も肩で裏板を締めることによって良く鳴るといった。 コントラバスの場合、立奏では裏板テコは非常にかけにくいが、 座奏では膝などを使うことができる。 ただし、ヴァイオリン、ヴィオラでは肩で裏板を締めると、 背骨が曲がるのと同時に上半身が硬くなる問題が生じる。 ここまでに述べたような奏法では、演奏者の位置では音量が低く雑音が多いように聞こえる。 しかしながら、ホールのように広いところでは、楽器から離れても音が減衰せず、 ホール全体が一体に鳴るかのような響きを体験することができる。 次にコントラバスの奏法に関する具体的な事項に言及する。さまざまな試みの結果; 1) 座って演奏する、 2) フレンチ式の弓を使用する、 3) ガット弦を使用する、 4) 固い松やにを使用する; という組合せにたどりついた。以下、それぞれの事項について詳述する。 1) 座奏について; コントラバスは、特にソロでは、立って演奏されることが多い。 しかしながら、立奏では、楽器の支持、楽器の回転を押さえること、 ロウポジションとハイポジションの間の移動に伴う不連続なフォームの変化などのために、 本来の演奏以外のことに大きな負担を強いられる。 そこで、私は、ピアノ演奏に用いられる背もたれのない単純な形状の椅子を、 高さ15センチメートル程の平台に載せて座り、楽器をチェロのように構えて座奏することにした。 足は両足共に平台に載せ、椅子には正面を向いて座る。 楽器のエンドピンは、平台の直前の床に刺し、主に足で楽器のボディを支える。 また、左足、特に膝を楽器の背板に適切に当て、背板の振動をコントロール(裏板ブレーキ)する。 このようなフォームにより、以下の利点が得られる。 背筋(背骨)が自然に伸び、肩、腰共に水平になる。 身体の左右のバランスが崩れた状態で運動すると、内臓を含む身体の故障が生じやすい。 ネックは左耳のすぐ横に位置し、駒が概ね身体の正面に来る。 その結果、演奏作業はほぼ顔の幅の範囲で行われ、 コントロールが容易である。音質も自然に良くなる。 左手は楽器を支持する必要がなく、自由に動かすことができる。 腕をネックにぶら下げるようにして、腕の重みだけで弦を押さえて弾くことができる。 従って、親指がシフティングのじゃまにならない。 座面が水平で平坦な低い椅子に座るので姿勢が自然になり 身体が安定して疲労が少ない上に身体を柔軟に動かすことができる。 通常のバス椅子は自然に座るには高過ぎる 左足(膝)で裏板の振動をコントロールすることにより、音の飛ぶ方向と焦点距離、 更に焦点の大きさ等を音楽表現に取り入れることができる。 すなわち、駒と魂柱は互いにずれて表板を挟んでいるので、 これらが表板と接する点を互いに「力点」・「支点」とする 「梃子(テコ)」が発生して表板を大きく振動させる。 同時に駒により発生した表板の振動は裏板にも伝わっているが、 裏板には魂柱が立っているだけで「梃子」の相手方は無い。 そこで膝などで裏板を押さえると、これが相手方となって「梃子」が生まれ、 裏板が大きく振動始める。背板の振動をコントロールすることにより、 楽器全体の振動を変化させることができる。これを私は「裏板ブレーキ」と呼んでいる。 振動が効率よくボディに伝わっているときには、 弦の振幅がむしろ小さくなることは既に述べたが、 同様に、背板の一点を制御することにより楽器からの音放れが良くなり、 客席の奥まで音を飛ばすことが可能になる。 2) フレンチ式の弓について; 他の弦楽器と異なり、コントラバスの弓には所謂ジャーマン式とフレンチ式の2種類がある。 私はジャーマン式でコントラバスを始め、 コンクール入賞、オーケストラ入団などの成果をあげてきたが、 フレンチ式にはなじみがなっかた。 しかしながら、理解を深めることもなく安易に批判的な立場をとっていたことに気づいて、 改めてフレンチ式を研究した結果、その奥深い可能性に目覚めた。 なお、私自身は今ではフレンチ式でしか演奏しないが、レッスンは両方で可能である。 以下、私の感じているフレンチ式の主な利点を挙げる。 a) 腕の有効長が6センチメートル程延びる。 このため、体を傾けたり曲げたりすることなく、自然に駒の近くを弾くことが可能になる。 ジャーマン式奏者の多くは右肩を落とすようにして演奏している。 これは体のバランスを崩して内臓疾患を惹起するものと憂慮される。 特に体格の点で不利な日本人には深刻な問題である。 b) 弦に対する弓の上下動(弦から離れ、近づく動き)が激減し、 弓毛が弦に接した状態を維持したまま演奏することができる。 c) 腕、手、指の全ての関節と筋肉を弾力的に用いることができ、 それらを介して腕の重みを弓にかけることができる。 従って、弓の運動(弓自体の振動)が妨げられない。 すなわち、フレンチ式ではどの弦を弾くときでも肩から腕にかけてのフォームは一定で、 手首の「あおり」と肘から先の変位だけで移弦ができる。 この点、ジャーマン式では移弦の際に重い腕全体を肩から動かす必要がある。 d) 上記のような作用により駒の近くを楽に弾くことができるので、 弓の速度を十分に落とすことができる。 その結果、一弓で弾ける範囲が広がり、息の長いフレージングが可能になる。 e) スピッカート、リコシェ、マルテレなど、ヴァイオリンでは当然に用いられている運弓テクニックを、 コントラバスで使うことができる。 f) フランス製の優秀な弓を使える。 サルトリー、ウシャール、ヴォワラン等、フランスの弓作りには、 イタリアの楽器制作に匹敵する高い文化がある。 3) 弦について; 弦の材質も演奏に大きく影響する。具体的には、ナチュラル・ガットが最も好ましく、 人工ガット(ナイロン・ガット)がそれに次ぐと考えている。 ガット弦は、弦長方向振動を含む定常的な振動の始まりが早く、 しかも、弾き終わると振動が素早く減衰する。 従って、音の切れがよく、音が混じらない。 この点、スチール弦は、音の始まりに一瞬の遅れがあり、 その上、いったん鳴り出すと弦の中にいつまでも振動が残ってしまう。 私はPirastro社(ドイツ)のEudoxaという銀平帯巻きのガット弦を使用しているが、 音色、特性、品質、耐久性の全てについて十分に満足している。 また、この弦は、巻いてある銀の摩擦係数の高さと弦の太さ(スチール弦に比べて太い)により、 指に自然な摩擦がある。 そのため、弦を押さえつけずに脱力して弾くことを余儀なくされる。 私は、これもガット弦の利点であると考えている。 いずれにせよ、いやしくも音楽家であれば、 その音を聞けばガット弦の良さをすぐさま理解できるはずだ。 4) 松脂について; 弓で弦を弾き始めると、弦はまず弓毛と共に移動し、 やがて弦の張力が弓毛の摩擦力に打ち勝つと弓毛から解放される。 音は、弦が弓毛から解放されて初めて鳴りだす。 以下、弓を動かし続ける限り弦は周期的に解放されて振動する。 このような現象に対して、固い松脂を使用することにより弦の解放の周期が縮まり、 よりきめ細かく柔らかい澄んだ音色をつくることができる。 太くて重い弦を使用するコントラバスでは、 一般に、油脂の含有量が高く粘性のある松脂が使用されている。 このため、弓毛と弦の間に柔らかい松脂の層が介在することになる。 この状態で弓が運動を開始すると、 松脂の粘度が高いので最初に弦が解放されるまでに時間がかかる。 また、弦の弓毛からの解放のタイミングは演奏者の意識とは無関係に松脂の特性で決まるので、 弦の振動のコントロールも困難になる。結果的に、荒い音が遅れて発生することになる。 さらに、解放が遅いので弦の振幅が大きくなり、音を止め、あるいは変えることにも不利になる。 実際、弦に振動が残ると次の音の音程と混じって音色が混濁する。 なお、私は、Wiliam Solchow (ニューヨーク)というヴァイオリン用の松脂を、 それもライトと称する非常にきめの細かい堅い松脂を使用している。 弦長方向振動を意識し、音場感(空間意識)を維持し、 そして身体全体を脱力して弾力的に用いるという奏法にこの松脂が加わり、 私の新しい奏法が現実のものとなった。 大変急ぎ足で述べたが、以上のような私の新しい奏法は、 従来から一般的に言われているセオリーとは異質である。 しかしながら、類似した奏法を提唱している音楽家もすでにいる。 私は、ドイツのコブレンツに工房を構える弦楽器マイスターの木村玄氏から受けたアドヴァイスから、 このようなインスピレーションを得た。 技術的な面では上記のような奏法の習熟により演奏者としての能力は高まるが、 大切なことはその先、すなわち、音楽そのものの表現であることは論を待たない。 #
by noda-methode
| 2005-11-15 18:34
| 野田メトーデHP版
2005年 11月 15日
2005年11月17日、(木)、改稿
問題点: ●曲の始めから練習すのが普通です。 練習中は、難しくて間違えたり、いろいろなアイディアを試すので通しでは弾き(け)ません。 大抵は最初から、又は少し前から弾きなおします。 曲の始めに比べて最後の音を弾いた回数(経験)ははるかに少なのです。 ということは、曲がすすむにつれて経験値が低くなっていく事になります。 ●弾き直しの時、ダウン弓で始めがちです。 ところが通して弾くとアップ弓が来てしまう、というような場合、パニックになります。 ●どんなに複雑な旋律でも分解すると2音間の移動です。 和音や重音の場合でも分解すると2音間が一つの単位ですし、 遠い跳躍も、分解すると小さな跳躍の集合です。 インターヴァル(音高の差)、短いメロディや、 簡単な旋律、ゆっくりなパッセージは弾けるのに、 そうでない箇所は演奏ミスが多かったり、 音程やリズムが不正確になりやすいものです。 ●余計なチューニングや、弾き始めの音の繰り返しをしてから弾き始めるのは無駄です。 本番ではこの種の準備運動(?)は出来ないので無意味なわけです。 ●音楽的な躍動感を腕の慣性などで表すことが多いけれど、これらは別物。 速いパッセージも遅いパッセージも、勢いを使わずに弾くと柔軟に対応できます。 同様に跳ねる音だからといっていつも弓を跳ねさせることはありません。 ●弾けない部分を繰り返すと、「弾き違えや音程の悪さ、つっかかり」の練習になります。 ●「弾ける」と思っているパッセージを本番で失敗するのが多いものです。「弾けている」という錯覚の場合が多いのです。 解決策: ●簡単な曲でも、後ろから練習します。逆向きのことではありません。 最後の音、 最後から2番目の音から最後の音へ、 最後から3番目の音から始めて最後の音へ、 というように進めていきます。 ●音楽的コンセプトにしたがって、フィンガリングとボウイングをある程度決め、 鉛筆で楽譜に書き込んでおきます。 「どのポジションでどの指を使うか」が大事です。 また、弓のアップ・ダウン、使う場所も書き込むべきです。 同じダウンボウでも、先弓から始めるか元弓かで違ってくるので、書き込むわけです。 ●変更はなるべく早い時期に。練習が進んでからは変更個所を本番で間違えやすいものです。 ●メトロノームを使い気が遠くなるほどゆっくりとさらいます。 1フレーズが弾き終わったら、メトロノームの目盛りを少しだけ上げてそのフレーズを繰り返します。 速くなったことを感じたら速くしすぎなのです。気がつかないくらい徐々にテンポを上げていくことが大事です。 テンポを一定に保つという作業は神経、エネルギーを使うので、メトロノームにその役割を任せてしまう、というのがメトロノームを使う理由です。 同じ理由でチューナーも有効です。 ●体全体の脱力に注意して、無駄な動き、こわばりが無いように運動(演奏)します。 必要なものはいつでも簡単に使えるよう、手の届く範囲に置いておきます。 ●楽譜:オリジナルを買ってください。練習用にのみコピーしますが、オリジナルだと楽譜を大切にしますし、しばらく間を置いても、『また弾いてみよう』という気持ちを起こさせます。また作曲家、出版社の著作権を守るべきです。 ●鉛筆、柔らかめ。3Bなどをつかいます。 ●消しゴム:力まなくてもよく消せるものを選んで下さい。消した後にまだ見えるのはストレスです。 ●メトロノーム:デジタル式、音質の良いもの。汚い音は耳が疲れます。 ●譜面台:金属製の折り畳み式の場合は、厚紙や薄い板などをのせると書き込みがしやすくなりますし、コピー譜などの場合は透けないので見やすくなります。 ●楽器立て:コントラバスの練習では楽器の上げ下ろし、書き込み、修正などが簡単にできるように。とにかく少しでもストレスを減らすことが神経集中のために大切です。 ●鏡:等身大が映るもの、すくなくとも半分の高さが必要でしょう。 利点: ●自動的に暗譜 ●久しぶりに弾いても短時間でレヴェルを取り戻せる ●体に優しく、疲れにくい ●フィンガリングやボウイングの変更も楽にできる ●始めは気が遠くなるほど時間がかかるが、結果としてとても早く技術的に仕上がる。 そのため、音楽的作業の時間が長くとれる。 ●曲の進行にしたがって経験値の高い領域に進むので、安心感が有り、あがることが少ない。 ●どの音からも練習した経験があるので、本番でミスしたり落ちてもすぐに元に戻れる。 ●非常にゆっくり練習するので楽器の構え方が良くないと弾けない。 合理的な構え方を研究するよい機会になる。 ●「常に弾き間違える部分」や、「音程のとれない部分」というものが始めから存在しない。 欠点: ●最初のゆっくり練習で我慢するのが大変。 ●時間が無いときなど焦る。 演奏感覚の為の、各種イメージ: ●石橋建築法的練習法 ●逆跳ねトリラー ●水風船イメージ ●バスケットボール・ドリブル・イメージ ●距離感を延ばすイメージ ●上半身振り子練習 ●安楽練習 ●サウンディングポイント練習 ●弦回転練習 ●マルテレ用弓撥ね体験 ●幽霊イメージ ●楽器の鳴る場所移動イメージ ●帰宅イメージ ●サイレン ●音無しの構え ●アホ面 ●天才音楽家俳優 ●リズム、アクセント変化法 ●弓落とし実験 ●弓の指外し体験 ●・・・・・・・・・・・・ #
by noda-methode
| 2005-11-15 18:27
| 野田メトーデHP版
|
ファン申請 |
||